2020年5月26日火曜日

帰り道は遠かった・・・・・・前編

この話は、ストレートオン1997年4月号に無理やり掲載して貰ったものです。


月曜日。
今日は天気がよい。土、日に出来た仕事を納めにTLMで出かけた。
納品は何事も無く終わり、いつもの喫茶店で朝食にする。


コーヒーとトースト、それにミニサラダ。
10時をまわった頃に店を出て、ポロポロと旧国道を家路につく。しかし、右折しなければならない交差点を直進してしまう。
「小関峠まで行ってみようか」これが全ての始まりだった。

●ミニ知識
小関越えは東海道の逢坂の関を大関と呼ぶのに対して、こちらを小関と呼ぶそうな。逢坂の関を通りたくない少し訳有りの旅人が通ったらしい。以前は茶畑がきれいなきれいないい峠道だった。

小関峠を越え三井寺前を通り、どんどん北上してしまう。
もうだれも俺を止められネェ。(止めへん、止めへん)日吉大社で左折し、西教寺を過ぎてまた左折。山裾の細いワインディングロードを流す。
完全にツーリングモードの入ってしまった。納品の帰りなのに。
従って服装はTシャツにGパン短足、いや短靴姿。デイパックの中には何も無し。目的も無し。
ワインディングロードから農道を走り仰木町。直進しようか曲がろうか。目的の無いツーリングとはいえ少しは山道を走りたい。
左折して仰木峠を目指す。

●ミニ知識
この峠道も古く、琵琶湖と大原を結ぶ生活の道であり、比叡山の行者や参拝者も利用したのだろう。

現在は峠の下まで林道が通っており、林道から峠までは百メートルほど。峠から南へ尾根道が有るがバイクは進入禁止だ。
峠を乗り越して下って行く。昨日までの雨で夏草が濡れている。すぐにGパンの裾と靴がビショビショになった。時折大原の家並みが見える。
「大原で昼飯を食おうか・・・」
杉林の道を下り、小さな沢を渡る。大原の里はすぐそこだ。
三千院の喧騒を避け左折する。国道に出て直ぐに右折し旧道へ向かう。もう江文峠が近い。

●ミニ知識
江文峠。ムッチャ古い峠。

現在江文峠は新道が出来、峠は寸断されなんの風情もない。新道の入り口から五百メートルほど南の旧道から峠を目指す。
伝教大師ゆかりのこの古道も新道が出来て荒れてきたのだろうか、道幅いっぱいに水が流れ、川のようになっているところがある。
味気ない峠を越え、林道を下れば静原である。
どうしよう・・・
真っ直ぐに行って車で混雑する鞍馬街道に出るか、それとも左に曲がって岩倉へ抜けるか・・・。
そうだ、この機会に以前地図で見た薬王坂へ行ってみよう。古い道だから一度は走らねば。
入口はすぐに分かった。急な舗装路を上がっていくと、急斜面に別荘地があり古道の面影はどこにもない。別荘地の外れから古道になり、夏草にハンドルをとられる。道は雨水で荒れており、掘れているところやステア気味のところ、木の階段などつづら折れ中に次々と現れる。面白い道だ。しかし距離は短い。すぐに峠についてしまった。

●ミニ知識
この峠道もムッチャ古い。大宮人がお忍びで大原に行くときは、八瀬からの若狭街道は通らず、この薬王坂を越えて静原に入り、静原から先ほど越えてきた江文峠を通って大原に通ったそうだ。艶事かけるエネルギーはすさまじいなあ。

峠から鞍馬側に下りてみることにした。出られるならば鞍馬で昼飯にしよう。
こちら側は夏草もなく荒れている感じはしない。手入れもされているような印象だ。古道の面影もあるいい道だ。
道の下に人家の屋根が見えたので、バイクを停め歩いて見に行く。寺と神社の間、境内のようなところへ出た。これは駄目だ。神社に参拝してそうそうに引き返すことにする。
楽しみながらゆっくりと上り、峠で小休止。
静原に戻るのもいやだったので、天ヶ岳への尾根道に入ってみる。
昭和56年版(古いっちゅーネン)の地図では道は載っていなかったが、地図を見てるとこの尾根は行けそうだ、いづれトライしなければと思っていた道だ。
ゆるやかで良く踏まれた道が続く。しかし、大分喉が渇いて来た。途中で何か買ってくるべきだったなぁ。まっ、この調子なら簡単に百井まで行けるだろう。百井でジュースを飲もう。
細い道をゆるやかに左へ曲がると、木の根が縦方向に浮き出した斜面が現れた。わずか3メートル程だ。手前でアクセルをふかす。一気に上ったつもりが、中ほどで失敗。勢いが足りなかったのだろう。バックしてやり直そう。ブイ―ン!が、全然勢いがつかない。それでも無理やりアタ~ック。シッパイ。汗がダラダラと流れる。
「イヤ~、冗談は止めて本気を出そう」今度は10メートル程バックして、と。ギアは3速でスピードに乗せて、と。だが、後輪が滑っている。またまた無理矢理アタ~ック!そして、また失敗!
「クソッ!何でやねん!」

●ミニ知識
この場合「クソッ!何でやねん!」ではなく「へったやなぁ俺って」が正しい。または「トライアルなんかヤメたるわい」なんかも素晴らしい表現方法ですね。

こうなったら押すしかない。エンジンをかけ力一杯押し上げる。重い。汗がボタボタと落ちる。後輪を抱え、前輪を引きずる。たったの3メートルを上るのにもうクタクタだ。Tシャツを脱いで汗を絞る。ああ、喉が渇いた。俺はこんなところで何をしているのだろう?仕事の納品の帰り道だったはずなのに。
ま、いっか。早く百井まで行って水分を補給しよう。



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6 件のコメント:

ワタヤン さんのコメント...

歳を取って痴呆気味になって徘徊しているのだとばかり思っていましたが
TシャツにGパン短足で徘徊するのは昔からだったのですね。

buratto28go さんのコメント...

ワタヤン、改めて読み返してみますと・・・
昔っからアホでした!

バイクに乗り始めた時から、ぶらっとお出かけburattoclubです。(笑)

ホワイト さんのコメント...

貴方もカトーが得意でしたか。
また、走ってみたいですね。
倒木やら崖崩れで走れないところが増えているようですが、担ぎ上げテクニックも使えるのではないでしょうか

buratto28go さんのコメント...

ホワイトさん、今はこんな元気はありません。
死ぬかと思いました。(笑)
一応トライアル車ですが、これからはオンロードバイクかよ!と突っ込まれるくらい、舗装路オンリーで走ろうと思います。 ( ´艸`)

Takesan さんのコメント...

ただただ道に迷ったおっさんの話、しかも地元民しか
分からない場所ばかりなのに、全国紙に掲載した編集長の懐
の深さに感服します。
何か弱みを握られていたのでしょうか?

buratto28go さんのコメント...

Takesan、でしょうね~
何とか峠とか何とか街道とか言われてもね~
分からんでしょうな~
ただ、迷ってると見せかけて迷ってないんですな~ これが・・・
生きてますからーっ!(笑)