しかし、更新業務再開が何時になるのか未定だそうです。
更新連絡書を送付しておりますが、現在、更新業務については、試験場・駅前センター・警察署の全てで業務を休止しております。再開の予定は、現時点で未定です。再開については、個々にお知らせは出来ませんので、京都府警のホームページをご覧いただくか、お電話でお問合せ願います。
と言う事でホームページを覗いてみますと・・・
運転免許証更新期間延長の郵送手続きについて
更新期間延長手続については、簡易書留による申請が可能となりました。来庁での手続き、失効手続きについてはこちらをご覧ください。
対象となる方
運転免許証の有効期間の末日が、「令和2年5月1日から同年7月31日」の方
有効期間を3ヶ月延長する手続きの申請が可能です。
運転及び更新が可能な期間
有効期間の末日から起算して3か月を経過する日まで
(再度の更新期間の延長をされた方は、裏面に記載された延長した運転及び更新可能期間の末日から起算して3か月を経過する日まで)
と書いて有るんですが私の運転免許証の有効期間は8月3日。
対象となる方の末日の3日後なんですよね~
だもんで、今の所更新期間延長手続きも出来ないみたい。困ったな~
2020年5月27日水曜日
2020年5月26日火曜日
帰り道は遠かった・・・・・・前編
この話は、ストレートオン1997年4月号に無理やり掲載して貰ったものです。
月曜日。
今日は天気がよい。土、日に出来た仕事を納めにTLMで出かけた。
納品は何事も無く終わり、いつもの喫茶店で朝食にする。
コーヒーとトースト、それにミニサラダ。
10時をまわった頃に店を出て、ポロポロと旧国道を家路につく。しかし、右折しなければならない交差点を直進してしまう。
「小関峠まで行ってみようか」これが全ての始まりだった。
●ミニ知識
小関越えは東海道の逢坂の関を大関と呼ぶのに対して、こちらを小関と呼ぶそうな。逢坂の関を通りたくない少し訳有りの旅人が通ったらしい。以前は茶畑がきれいなきれいないい峠道だった。
小関峠を越え三井寺前を通り、どんどん北上してしまう。
もうだれも俺を止められネェ。(止めへん、止めへん)日吉大社で左折し、西教寺を過ぎてまた左折。山裾の細いワインディングロードを流す。
完全にツーリングモードの入ってしまった。納品の帰りなのに。
従って服装はTシャツにGパン短足、いや短靴姿。デイパックの中には何も無し。目的も無し。
ワインディングロードから農道を走り仰木町。直進しようか曲がろうか。目的の無いツーリングとはいえ少しは山道を走りたい。
左折して仰木峠を目指す。
●ミニ知識
この峠道も古く、琵琶湖と大原を結ぶ生活の道であり、比叡山の行者や参拝者も利用したのだろう。
現在は峠の下まで林道が通っており、林道から峠までは百メートルほど。峠から南へ尾根道が有るがバイクは進入禁止だ。
峠を乗り越して下って行く。昨日までの雨で夏草が濡れている。すぐにGパンの裾と靴がビショビショになった。時折大原の家並みが見える。
「大原で昼飯を食おうか・・・」
杉林の道を下り、小さな沢を渡る。大原の里はすぐそこだ。
三千院の喧騒を避け左折する。国道に出て直ぐに右折し旧道へ向かう。もう江文峠が近い。
●ミニ知識
江文峠。ムッチャ古い峠。
現在江文峠は新道が出来、峠は寸断されなんの風情もない。新道の入り口から五百メートルほど南の旧道から峠を目指す。
伝教大師ゆかりのこの古道も新道が出来て荒れてきたのだろうか、道幅いっぱいに水が流れ、川のようになっているところがある。
味気ない峠を越え、林道を下れば静原である。
どうしよう・・・
真っ直ぐに行って車で混雑する鞍馬街道に出るか、それとも左に曲がって岩倉へ抜けるか・・・。
そうだ、この機会に以前地図で見た薬王坂へ行ってみよう。古い道だから一度は走らねば。
入口はすぐに分かった。急な舗装路を上がっていくと、急斜面に別荘地があり古道の面影はどこにもない。別荘地の外れから古道になり、夏草にハンドルをとられる。道は雨水で荒れており、掘れているところやステア気味のところ、木の階段などつづら折れ中に次々と現れる。面白い道だ。しかし距離は短い。すぐに峠についてしまった。
●ミニ知識
この峠道もムッチャ古い。大宮人がお忍びで大原に行くときは、八瀬からの若狭街道は通らず、この薬王坂を越えて静原に入り、静原から先ほど越えてきた江文峠を通って大原に通ったそうだ。艶事かけるエネルギーはすさまじいなあ。
峠から鞍馬側に下りてみることにした。出られるならば鞍馬で昼飯にしよう。
こちら側は夏草もなく荒れている感じはしない。手入れもされているような印象だ。古道の面影もあるいい道だ。
道の下に人家の屋根が見えたので、バイクを停め歩いて見に行く。寺と神社の間、境内のようなところへ出た。これは駄目だ。神社に参拝してそうそうに引き返すことにする。
楽しみながらゆっくりと上り、峠で小休止。
静原に戻るのもいやだったので、天ヶ岳への尾根道に入ってみる。
昭和56年版(古いっちゅーネン)の地図では道は載っていなかったが、地図を見てるとこの尾根は行けそうだ、いづれトライしなければと思っていた道だ。
ゆるやかで良く踏まれた道が続く。しかし、大分喉が渇いて来た。途中で何か買ってくるべきだったなぁ。まっ、この調子なら簡単に百井まで行けるだろう。百井でジュースを飲もう。
細い道をゆるやかに左へ曲がると、木の根が縦方向に浮き出した斜面が現れた。わずか3メートル程だ。手前でアクセルをふかす。一気に上ったつもりが、中ほどで失敗。勢いが足りなかったのだろう。バックしてやり直そう。ブイ―ン!が、全然勢いがつかない。それでも無理やりアタ~ック。シッパイ。汗がダラダラと流れる。
「イヤ~、冗談は止めて本気を出そう」今度は10メートル程バックして、と。ギアは3速でスピードに乗せて、と。だが、後輪が滑っている。またまた無理矢理アタ~ック!そして、また失敗!
「クソッ!何でやねん!」
●ミニ知識
この場合「クソッ!何でやねん!」ではなく「へったやなぁ俺って」が正しい。または「トライアルなんかヤメたるわい」なんかも素晴らしい表現方法ですね。
こうなったら押すしかない。エンジンをかけ力一杯押し上げる。重い。汗がボタボタと落ちる。後輪を抱え、前輪を引きずる。たったの3メートルを上るのにもうクタクタだ。Tシャツを脱いで汗を絞る。ああ、喉が渇いた。俺はこんなところで何をしているのだろう?仕事の納品の帰り道だったはずなのに。
ま、いっか。早く百井まで行って水分を補給しよう。
[続きを読む]
月曜日。
今日は天気がよい。土、日に出来た仕事を納めにTLMで出かけた。
納品は何事も無く終わり、いつもの喫茶店で朝食にする。
コーヒーとトースト、それにミニサラダ。
10時をまわった頃に店を出て、ポロポロと旧国道を家路につく。しかし、右折しなければならない交差点を直進してしまう。
「小関峠まで行ってみようか」これが全ての始まりだった。
●ミニ知識
小関越えは東海道の逢坂の関を大関と呼ぶのに対して、こちらを小関と呼ぶそうな。逢坂の関を通りたくない少し訳有りの旅人が通ったらしい。以前は茶畑がきれいなきれいないい峠道だった。
小関峠を越え三井寺前を通り、どんどん北上してしまう。
もうだれも俺を止められネェ。(止めへん、止めへん)日吉大社で左折し、西教寺を過ぎてまた左折。山裾の細いワインディングロードを流す。
完全にツーリングモードの入ってしまった。納品の帰りなのに。
従って服装はTシャツにGパン短足、いや短靴姿。デイパックの中には何も無し。目的も無し。
ワインディングロードから農道を走り仰木町。直進しようか曲がろうか。目的の無いツーリングとはいえ少しは山道を走りたい。
左折して仰木峠を目指す。
●ミニ知識
この峠道も古く、琵琶湖と大原を結ぶ生活の道であり、比叡山の行者や参拝者も利用したのだろう。
現在は峠の下まで林道が通っており、林道から峠までは百メートルほど。峠から南へ尾根道が有るがバイクは進入禁止だ。
峠を乗り越して下って行く。昨日までの雨で夏草が濡れている。すぐにGパンの裾と靴がビショビショになった。時折大原の家並みが見える。
「大原で昼飯を食おうか・・・」
杉林の道を下り、小さな沢を渡る。大原の里はすぐそこだ。
三千院の喧騒を避け左折する。国道に出て直ぐに右折し旧道へ向かう。もう江文峠が近い。
●ミニ知識
江文峠。ムッチャ古い峠。
現在江文峠は新道が出来、峠は寸断されなんの風情もない。新道の入り口から五百メートルほど南の旧道から峠を目指す。
伝教大師ゆかりのこの古道も新道が出来て荒れてきたのだろうか、道幅いっぱいに水が流れ、川のようになっているところがある。
味気ない峠を越え、林道を下れば静原である。
どうしよう・・・
真っ直ぐに行って車で混雑する鞍馬街道に出るか、それとも左に曲がって岩倉へ抜けるか・・・。
そうだ、この機会に以前地図で見た薬王坂へ行ってみよう。古い道だから一度は走らねば。
入口はすぐに分かった。急な舗装路を上がっていくと、急斜面に別荘地があり古道の面影はどこにもない。別荘地の外れから古道になり、夏草にハンドルをとられる。道は雨水で荒れており、掘れているところやステア気味のところ、木の階段などつづら折れ中に次々と現れる。面白い道だ。しかし距離は短い。すぐに峠についてしまった。
●ミニ知識
この峠道もムッチャ古い。大宮人がお忍びで大原に行くときは、八瀬からの若狭街道は通らず、この薬王坂を越えて静原に入り、静原から先ほど越えてきた江文峠を通って大原に通ったそうだ。艶事かけるエネルギーはすさまじいなあ。
峠から鞍馬側に下りてみることにした。出られるならば鞍馬で昼飯にしよう。
こちら側は夏草もなく荒れている感じはしない。手入れもされているような印象だ。古道の面影もあるいい道だ。
道の下に人家の屋根が見えたので、バイクを停め歩いて見に行く。寺と神社の間、境内のようなところへ出た。これは駄目だ。神社に参拝してそうそうに引き返すことにする。
楽しみながらゆっくりと上り、峠で小休止。
静原に戻るのもいやだったので、天ヶ岳への尾根道に入ってみる。
昭和56年版(古いっちゅーネン)の地図では道は載っていなかったが、地図を見てるとこの尾根は行けそうだ、いづれトライしなければと思っていた道だ。
ゆるやかで良く踏まれた道が続く。しかし、大分喉が渇いて来た。途中で何か買ってくるべきだったなぁ。まっ、この調子なら簡単に百井まで行けるだろう。百井でジュースを飲もう。
細い道をゆるやかに左へ曲がると、木の根が縦方向に浮き出した斜面が現れた。わずか3メートル程だ。手前でアクセルをふかす。一気に上ったつもりが、中ほどで失敗。勢いが足りなかったのだろう。バックしてやり直そう。ブイ―ン!が、全然勢いがつかない。それでも無理やりアタ~ック。シッパイ。汗がダラダラと流れる。
「イヤ~、冗談は止めて本気を出そう」今度は10メートル程バックして、と。ギアは3速でスピードに乗せて、と。だが、後輪が滑っている。またまた無理矢理アタ~ック!そして、また失敗!
「クソッ!何でやねん!」
●ミニ知識
この場合「クソッ!何でやねん!」ではなく「へったやなぁ俺って」が正しい。または「トライアルなんかヤメたるわい」なんかも素晴らしい表現方法ですね。
こうなったら押すしかない。エンジンをかけ力一杯押し上げる。重い。汗がボタボタと落ちる。後輪を抱え、前輪を引きずる。たったの3メートルを上るのにもうクタクタだ。Tシャツを脱いで汗を絞る。ああ、喉が渇いた。俺はこんなところで何をしているのだろう?仕事の納品の帰り道だったはずなのに。
ま、いっか。早く百井まで行って水分を補給しよう。
[続きを読む]
帰り道は遠かった・・・・・・後編
前編
細い林間の道を進んで行くと、右の谷からの道と出会った。
左へ行く。上がったり下がったり、なかなか楽しい。だれにも会わない。気楽に走れる。S字を描きながら上っていくと斜度が少しキツクなり、あわててアクセルを開く。が、遅かった。細い一本の木の根が越えられない。バックしてやり直そう。ブイ~ン!が、全然勢いがつかない。それでも無理矢理アタ~ック!(なんか、さっきも同じ事を書いたような・・・)気を取り直して3回目のトライ。先ほどの事もあるので思いっきりバックして、と。今度こそブイ~ン!と。スピードが・・・・・・出ない。
「クソッ!何でやねん!」(注:ミニ知識 参照)
終わった。全て終わった。トライアルを始めて十数年。あの岩を越え、あの坂を上りこの岩ではひっくり返り、この坂ではまくれ、その岩ではステップを曲げ、その坂ではレバーを折り、あっちの坂ではタンクを凹まし、あっちの坂ではフェンダーを割った。それもこれも今となっては思い出だ。こんな細い木の根が越えられないなんて。もう全てが終わったんだ・・・・・・
さてと、結局押す事にする。
またも力仕事。飽和状態のTシャツの表面を、汗がダラダラと流れていく。Gパンもパンツもビチョビチョ。よくこれだけの汗が出るものだ。必死で押し上げ、ヘタヘタとその場に座り込む。キツイ。喉が焼ける。
「エライ事になってきたなあ」一刻も早く百井に行って、水分を補給しないと・・・。
もう、楽しいトレッキングどころではない。景色を見る余裕もない。必死で走る。天ヶ岳の頂上まで。
天ヶ岳の頂上は見通しが悪く、眺望はきかなかった。急ぎ下りに向かう。百井峠から金毘羅山への尾根道へ出て左へ。ハイカーが多いのだろう、良く踏まれた道が続く。ほどなく舗装路に出た。ここまで来れば百井はすぐそこ。ぶっ飛ばす。あそこだ!バイクを停めるのももどかしく、自販機に百円玉を入れ・・・?
あれっ???電源が切れている。店のガラス越しに声をかけてみるが返事がない。誰もいない!?そんな馬鹿な!!もう気が狂いそうだ。ふと店の横の小さな水路に目が止まる。きれいな水だ、飲めそうだ!イヤ、待て。農薬が流れ込んでるかもしれない。落ちつけ。
もう一度店の方に目を戻す。入口の横に台所用の流し台が置いて有る。粗大ゴミらしい・・・エッ、蛇口がついてる。
まさかと思いながらも期待を込めて蛇口をヒネッた。出た!水だ!生ぬるい水が徐々に冷たくなっていく。ウマイ!と書きたいところだが少し飲んだところで急激に腹が痛くなり、そのまま固まってしまった。強烈な痛みだ。しばし無言。一分ほどで痛みが治まってきたので少しづつ水を飲む。
しかし、たらふく飲んでも喉が渇いているような感覚だ。それでも、顔と手を洗い、ひと心地がついた。さあ、山を下って飯を食おう。
百井峠を下って鞍馬街道へ出る。岩倉か白川通り辺りで食うかと考えながら走っていると、旧花背峠を思い出してしまった。この峠もいずれ走りたいと思っていた道だ。喉の渇きも治まったし、ついでにこの道も走ってみるか。入口を見ると林道だ。楽に上れるだろう。
●ミニ知識
ご存知の通り現在の花背峠が出来るまでは、京の都と小浜を結ぶ若狭街道の重要な峠のひとつであった。
小さな石がゴロゴロしているところを少し上ると、雲行きが怪しくなってきた。良く滑る丸太橋を渡り、藪をかき分け、気がつけば沢の中を走っている。入口を間違えたのか?これはただの山道じゃないのか?少し山道を走るとコンクリートで出来た小さな砂防堤が現れた。右にラインがあるが、手前の岩が沢に落ちそうになっている。岩を動かしラインを整える。高さ30~40センチの段差だが左の沢が気になる。こんなところが本当に若狭街道なのだろうか?とりあえず、この砂防堤を越え、行ける所まで行ってみよう。少しビビリながら砂防堤を越え、沢を少し行くとまた道らしくなってきた。土の斜面を右に左に上り詰めて行くと最後が上がれなくなった。数本の杉の急斜面をタイトにS字を描くルート。これは無理だ。バイクを停めよく見ると、右手の斜面に新しい道が出来ている。しかし、こちらもZ形になっており、ターンは無理。でも何とかなりそうだ。またまた押し上げることにしよう。仕方がない。今日は厄日なのだと自分に言い聞かせた。
また喉が渇いてしまったが、旧道らしい面影が感じられる道に出た。やっぱり若狭街道だ。嬉しくなり峠へ急ぐ。峠には大きな杉と祠があった。
しかし、現在は別所町と芹生から、車で入ってこられる峠になっており、長き歴史を秘めた旧街道の峠の風格はない。
このところ、北山では大規模の林道工事が進んでおり、旧若狭街道や旧高浜街道の趣のある峠が壊されているらしい。非常に残念だ。
さあ、今度こそ帰ろう。別所側へ下り新花背を越え鞍馬街道を下る。途中の水場で水分を補給。若いアベックが、汗だくドロドロの俺を見て視線を逸らせ後ずさりする。さもありなん。他人が見ると完全に不審者に見えるだろう。悲しい事に、そういう目で見られることには慣れている。そんな自分がいとおしい。今度は腹痛を起こすこともなく、ガブガブ飲めた。やっぱりいとおしい。
市原まで下り、二軒茶屋の分かれ道を幡枝方向へ。2~300メートル走ったところでガス欠になってしまった。HRCのタンクにしているのでリザーブがない。今日は色々楽しめる。
この辺りの地理は不案内で、近いガソリンスタンドが分からない。とりあえず車の少ない道を押していこう。
幡枝辺りから、住宅と畑の中を通って広い道に出たが何もない。広い道をしばらく東に行き、右折した。宝ヶ池?前方にトンネルが見える。上り坂だが、今日押してきた山道に比べれば舗装路の上りなど屁でもない。トンネルを抜け坂を下り、東西の広い通りに出たがスタンドは見あたらない。東に向かって押して行くがスタンドどころかジュースの販売機もない。今日は本当に厄日だ。
やっと道路の反対側に自動販売機を発見!お懐かしや自販機さま!ここでジュース3本立て続けという荒業を使う。後は何か食い物が欲しい。住宅街を南へ押していく。パン屋ぐらいは有るだろう・・・
しかし、見事なまでに何もない。コンビニも、パン屋も、駄菓子屋も・・・。静かで環境のいい住宅街なのだろう。でも、なんだか何もないところを選んで押しているようだ。足が痛い。たいがい疲れた・・・。
やっと向こうの方に賑やかな大通りが見えてきた。通りの名は北大路通。その大通りの角にスタンドはあった。
幡枝から北大路通まで、発見できたのはジュースの販売機一台のみ。我ながら見事だ。自分で自分を誉めてやりたい。
結局、クタクタになった胃袋では食欲もなく、何も食わずに懐かしい我が家、山科に帰ったのであった。
細い林間の道を進んで行くと、右の谷からの道と出会った。
左へ行く。上がったり下がったり、なかなか楽しい。だれにも会わない。気楽に走れる。S字を描きながら上っていくと斜度が少しキツクなり、あわててアクセルを開く。が、遅かった。細い一本の木の根が越えられない。バックしてやり直そう。ブイ~ン!が、全然勢いがつかない。それでも無理矢理アタ~ック!(なんか、さっきも同じ事を書いたような・・・)気を取り直して3回目のトライ。先ほどの事もあるので思いっきりバックして、と。今度こそブイ~ン!と。スピードが・・・・・・出ない。
「クソッ!何でやねん!」(注:ミニ知識 参照)
終わった。全て終わった。トライアルを始めて十数年。あの岩を越え、あの坂を上りこの岩ではひっくり返り、この坂ではまくれ、その岩ではステップを曲げ、その坂ではレバーを折り、あっちの坂ではタンクを凹まし、あっちの坂ではフェンダーを割った。それもこれも今となっては思い出だ。こんな細い木の根が越えられないなんて。もう全てが終わったんだ・・・・・・
さてと、結局押す事にする。
またも力仕事。飽和状態のTシャツの表面を、汗がダラダラと流れていく。Gパンもパンツもビチョビチョ。よくこれだけの汗が出るものだ。必死で押し上げ、ヘタヘタとその場に座り込む。キツイ。喉が焼ける。
「エライ事になってきたなあ」一刻も早く百井に行って、水分を補給しないと・・・。
もう、楽しいトレッキングどころではない。景色を見る余裕もない。必死で走る。天ヶ岳の頂上まで。
天ヶ岳の頂上は見通しが悪く、眺望はきかなかった。急ぎ下りに向かう。百井峠から金毘羅山への尾根道へ出て左へ。ハイカーが多いのだろう、良く踏まれた道が続く。ほどなく舗装路に出た。ここまで来れば百井はすぐそこ。ぶっ飛ばす。あそこだ!バイクを停めるのももどかしく、自販機に百円玉を入れ・・・?
あれっ???電源が切れている。店のガラス越しに声をかけてみるが返事がない。誰もいない!?そんな馬鹿な!!もう気が狂いそうだ。ふと店の横の小さな水路に目が止まる。きれいな水だ、飲めそうだ!イヤ、待て。農薬が流れ込んでるかもしれない。落ちつけ。
もう一度店の方に目を戻す。入口の横に台所用の流し台が置いて有る。粗大ゴミらしい・・・エッ、蛇口がついてる。
まさかと思いながらも期待を込めて蛇口をヒネッた。出た!水だ!生ぬるい水が徐々に冷たくなっていく。ウマイ!と書きたいところだが少し飲んだところで急激に腹が痛くなり、そのまま固まってしまった。強烈な痛みだ。しばし無言。一分ほどで痛みが治まってきたので少しづつ水を飲む。
しかし、たらふく飲んでも喉が渇いているような感覚だ。それでも、顔と手を洗い、ひと心地がついた。さあ、山を下って飯を食おう。
百井峠を下って鞍馬街道へ出る。岩倉か白川通り辺りで食うかと考えながら走っていると、旧花背峠を思い出してしまった。この峠もいずれ走りたいと思っていた道だ。喉の渇きも治まったし、ついでにこの道も走ってみるか。入口を見ると林道だ。楽に上れるだろう。
●ミニ知識
ご存知の通り現在の花背峠が出来るまでは、京の都と小浜を結ぶ若狭街道の重要な峠のひとつであった。
小さな石がゴロゴロしているところを少し上ると、雲行きが怪しくなってきた。良く滑る丸太橋を渡り、藪をかき分け、気がつけば沢の中を走っている。入口を間違えたのか?これはただの山道じゃないのか?少し山道を走るとコンクリートで出来た小さな砂防堤が現れた。右にラインがあるが、手前の岩が沢に落ちそうになっている。岩を動かしラインを整える。高さ30~40センチの段差だが左の沢が気になる。こんなところが本当に若狭街道なのだろうか?とりあえず、この砂防堤を越え、行ける所まで行ってみよう。少しビビリながら砂防堤を越え、沢を少し行くとまた道らしくなってきた。土の斜面を右に左に上り詰めて行くと最後が上がれなくなった。数本の杉の急斜面をタイトにS字を描くルート。これは無理だ。バイクを停めよく見ると、右手の斜面に新しい道が出来ている。しかし、こちらもZ形になっており、ターンは無理。でも何とかなりそうだ。またまた押し上げることにしよう。仕方がない。今日は厄日なのだと自分に言い聞かせた。
また喉が渇いてしまったが、旧道らしい面影が感じられる道に出た。やっぱり若狭街道だ。嬉しくなり峠へ急ぐ。峠には大きな杉と祠があった。
しかし、現在は別所町と芹生から、車で入ってこられる峠になっており、長き歴史を秘めた旧街道の峠の風格はない。
このところ、北山では大規模の林道工事が進んでおり、旧若狭街道や旧高浜街道の趣のある峠が壊されているらしい。非常に残念だ。
さあ、今度こそ帰ろう。別所側へ下り新花背を越え鞍馬街道を下る。途中の水場で水分を補給。若いアベックが、汗だくドロドロの俺を見て視線を逸らせ後ずさりする。さもありなん。他人が見ると完全に不審者に見えるだろう。悲しい事に、そういう目で見られることには慣れている。そんな自分がいとおしい。今度は腹痛を起こすこともなく、ガブガブ飲めた。やっぱりいとおしい。
市原まで下り、二軒茶屋の分かれ道を幡枝方向へ。2~300メートル走ったところでガス欠になってしまった。HRCのタンクにしているのでリザーブがない。今日は色々楽しめる。
この辺りの地理は不案内で、近いガソリンスタンドが分からない。とりあえず車の少ない道を押していこう。
幡枝辺りから、住宅と畑の中を通って広い道に出たが何もない。広い道をしばらく東に行き、右折した。宝ヶ池?前方にトンネルが見える。上り坂だが、今日押してきた山道に比べれば舗装路の上りなど屁でもない。トンネルを抜け坂を下り、東西の広い通りに出たがスタンドは見あたらない。東に向かって押して行くがスタンドどころかジュースの販売機もない。今日は本当に厄日だ。
やっと道路の反対側に自動販売機を発見!お懐かしや自販機さま!ここでジュース3本立て続けという荒業を使う。後は何か食い物が欲しい。住宅街を南へ押していく。パン屋ぐらいは有るだろう・・・
しかし、見事なまでに何もない。コンビニも、パン屋も、駄菓子屋も・・・。静かで環境のいい住宅街なのだろう。でも、なんだか何もないところを選んで押しているようだ。足が痛い。たいがい疲れた・・・。
やっと向こうの方に賑やかな大通りが見えてきた。通りの名は北大路通。その大通りの角にスタンドはあった。
幡枝から北大路通まで、発見できたのはジュースの販売機一台のみ。我ながら見事だ。自分で自分を誉めてやりたい。
結局、クタクタになった胃袋では食欲もなく、何も食わずに懐かしい我が家、山科に帰ったのであった。
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